その30 |
『Forty Licks』 2002 The Rolling Stones |
ローリング・ストーンズのジャパァーン・トゥアー、中高年の方々を中心に盛り上がったらしいです。
・・・・冷めた書き方ですかね。すんませんね、行かなかったのでね。ドームでライヴを見る気はまるで起こらないし(第一見えない、音悪い)、武道館の競争率の高さにはソッコー白旗。僕はそういうヘタレです。にしても2万円とは。アメリカあたりではクラブ規模のライヴで20万とか取ってるらしい、稼いでますよね。もう充分お金持ちだろうに。
やっぱり冷めてるな。 結成40周年を記念した40曲入りのベスト盤の発売と、それに連動した世界ツアーという思いっきり企画色を前面に出した展開というのがストーンズとしては異例で(特にミックはそういうのを回避してきたハズ)。 そんなんでいいんか?と思ってしまう。 そもそもが90年代以降のローテーション、新作アルバム(評価も売り上げも下降気味)を出し、莫大な利益を上げる世界ツアーを行い、締めとしてのツアーのライヴ・アルバム(レコード会社との契約枚数を消化する為)、という歯車に飲み込まれてバンドの創造性はフェイド・アウトしていってるんじゃないだろうかと思うことしばしで。 勿論、ライヴ・バンドとしてはまだまだ現役を続けられるだろうから、『ジャンピン・ジャック・フラッシュ』や『ブラウン・シュガー』や『ホンキー・トンク・ウオメン』や『サティスファクション』キリがないから止めときますが、生で聞けるんならOKという方々にはそれでいいんだろうけど。あぁミックもう60なのにあんなに動き回ってるとかキースまだ生きてるよ、とかね。 でもホンマにそんなんでいいんか?と。第一線を「降りた」ことをあっさり認めてどうする。今のストーンズについて書くとなると、ほとんど否定的な語り口になってしまうのはいたしかたないと思う。 でも時折、ものすごくストーンズの音を聞きたくなる。ものすごくあのビートが欲しくなる時がある。 3月4月は特にそうだった。その渇きが僕等にある限り、連中に対する批判がまるっきり的外れなのもまた確かなのだ。 この『フォーティー・リックス』(訳すと40回ぺろぺろ、だそうです・・・・)2枚組ベストは取っ替えひっかえ聞いた。1枚目の60年代(ロンドン/デッカ・レーベル時代の録音)時代の鼓動そのものだった名曲群も、2枚目の70年代以降(ストーンズ・レーベルの録音)頂点を極めた後の悪戦苦闘の記録も(4曲の新曲はショボいけど)どちらもグっとくる。これしかねーよと思わせる魔力。冗談じゃなく、『レット・イット・ブリード』(1969)や『メイン・ストリートのならず者』(1972)に比肩する傑作を連中はまた作るだろうとマジに僕は思っている。その時は、大枚をいくら叩こうがライヴに行く。 苔が生えようがどうなろうが転がりつづけること。なにより「生き残る」こと。 鮮血を流しつづけながら生きのびる、ヒリヒリするようなリアリティ。人が持つタフな生存本能がストーンズの音には宿っている。 |
キシタケ(2003.6.16)※執筆は5/4
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