第1回
あの頃、スピルバーグ印。
初めまして。カッツ伊知郎と申します。こうやって人様の目に触れるところに文を書くというのもそうないことと思いますので、緊張しつつも楽しくやらさせていただきます。よろしく!
で、なに書こうか考えたんですが、『映画』についてにしました。なんとなく『映画史』みたいなのをやりたいと思っているのです。といってもたいしたことは考えていないのですが。作品の良し悪しやテーマ的なものを分析したりとか、そういうものではなく、まあそんなむつかしいこと出来ないし、見た人それぞれが感じることなので。どちらかというと映画史的な視点から、その映画がどういう存在なのかを考察(大げさ)したいなあ、と。とはいってもリュミエール兄弟やエイゼンシュテインは出てきません、おそらく。
題して『極私的エーガ史。69-01』! うーん、よくわからん。
そして!最初にルールを決めたいと思います。なんのこっちゃ。私は1969年生まれなので、60年代以降の映画、もっというと物心ついた頃の映画から昨日見た映画までの話にしようと思っています。そのほうが話しやすいし楽かなって。つうか公開当時を思い出せないものは書けん。次にスタッフや配給など、普段あまり気にしない側面もスポットを当てて何か違った見方を提案できればと思います。そしてせっかくネット上に掲載する文章なので、ネットを駆使して書きます。つまりデータ及び内容、注釈など、引用できるところはおもいっきしパクります。それも一つのやり方だと思うので。どっからパクったかはなるべくご紹介していきます。お楽しみに。
異常に前置きが長くなりましたが、極私的エーガ論。いよいよ始まりです。
先日、ようやくスティーブン・スピルバーグの最新作『A.I.』を見ました。なんか『2ちゃんねる』とかで、見た人の評判が非常に悪くなんとなく行くのをためらってたのです。昔はスピルバーグっていうと迷わず見に行ってたのに。とりあえず、『IMDb』っていうアメリカの映画データベースでスピルバーグ(Spielberg)を検索。関わった作品の一覧を見ることが出来ます。もの凄い量です。監督だけでなくプロデューサーとしても、ジェリー・ブラッカイマーやジョエル・シルバーに負けない仕事量です。主な映画作品を、その名も『スピルバーグ』というページや『SF MOVIE Data Bank』など参考にして整理してみました。
激突! 1972 (73年公開) |
続・激突!カージャック 1973(74年公開) |
JAWS 1975 (1975年12月 6日) |
未知との遭遇 1977(78年2月25日)(特別編:1980年、1982年) |
1941 1979(80年公開) |
レイダース 失われたアーク 1981(1981年12月5日) |
ET 1982 (1982年12月4日公開) |
トワイライト・ゾーン/超次元の体験 1983(84年公開) |
カラー・パープル 1984(86年9月13日) |
インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説 1984(84年7月7日) |
世にも不思議なアメージング・ストーリー 1987 |
太陽の帝国 1987 |
インディー・ジョーンズ/最後の聖戦 1989 (1989年7月8日) |
オールウェイズ 1989 |
フック 1991 (1992年6月20日) |
ジュラシック・パーク 1993(1993年7月24日) |
シンドラーのリスト 1993(1994年2月26日) |
ロスト・ワールド 1997 (1997年7月12日) |
アミスタッド 1997 |
プライベート・ライアン 1998 (1998 年 9 月 26 日) |
A.I 2001 (2001年6月30日) |
抱きしめたい 1978 |
ユーズド・カー 1979 |
Oh!ベルーシ絶体絶命 1981 製作総指揮 |
ポルターガイスト 1982 (1982年7月17日) |
グレムリン 1984(1984年12月 8日) |
バック・トゥー・ザ・フューチャー 1985(1985年12月7日) |
グーニーズ 1985 |
ヤング・シャーロック ピラミッドの謎 1985(1986年3月8日)製作総指揮 |
アメリカ物語 1986・製作総指揮 |
マネーピット 1986 |
インナースペース 1987 |
ニューヨーク東8番街の奇跡 1987 |
ロジャー・ラビット 1988 |
リトルフットの大冒険 謎の恐竜大陸 1988・製作総指揮 |
バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2 1989 (1989年12月9日) |
晩秋 1989 |
バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3 1990 (1990年 7月 6日)製作総指揮 |
グレムリン2 ―新種誕生― 1990(1990年8月3日)製作総指揮 |
夢 1990(1990年 5月25日)製作総指揮 |
アラクノフォビア 1990(1991年3月8日)製作総指揮 |
ジョー、満月の島へ行く 1990 製作総指揮 |
フリント・ストーン 1994 (1994年9月23日) |
キャスパー 1995 |
ツイスター 1996 (1996年7月6日) |
メン・イン・ブラック 1997 (1997年12月6日) |
マスク・オブ・ゾロ 1998(1998年10月10日) |
ディープ・インパクト 1998(1998年 6月20日) |
A.I. 2001(2001年6月30日)製作総指揮 |
ジュラシックパークV 2001(2001年8月11日)製作総指揮 |
ちょっといいかげんなところもありますが、劇場公開作だけでもこんだけあります。まさかこの中で1本も見てないっていう人はいませんよね。私は『E.T.』が公開されたとき13才。まさに映画にハマりだす年頃。その後のいわゆるスピルバーグ印のほとんどを見てきました。スピルバーグ印。そう、『E.T.』以降だと思うのですが、スピルバーグの関わった映画はスピルバーグの映画として宣伝され見るほうもスピルバーグの映画として見てた気がします。スピルバーグ印とは一体何だったのでしょうか。
それまで演出能力は高く評価され『JAWS』『未知との遭遇』というメガヒットを飛ばしていたとはいえ、70年代、スピルバーグという名前の観客へのアピール度はさほどなかったように思います。しかし『未知との遭遇』は、同じ年に制作されたジョージ・ルーカスの『スターウォーズ』と共に、新しい次元の視覚効果による新たな物語の可能性を感じさせていました。それは何かというと、映画の現場にコンピューターを持ち込んだのです。カメラの動きをコンピューターで制御する「モーションコントロール」など、それまでにないリアルな合成を可能にしました。そんなスピルバーグとルーカスが組んだのが『レイダース 失われたアーク』。かつての冒険活劇を新しい映像表現で蘇らせる、という試みは見事に成功し、大ヒットとなりました。ここで押さえておきたいのは、視覚効果をルーカスのILMが担当したということ。そして『1941』に続いてフランク・マーシャルとキャスリーン・ケネディが製作チームとして参加したことです。彼らは『E.T.』大ヒット後の1984年、スピルバーグと共にアンブリン・エンターテイメントの設立パートナーとなります。このアンブリンで製作または共同製作した、『グレムリン』、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズ、『グーニーズ』、『ヤング・シャーロック/ピラミッドの謎』、『アメリカ物語』、『マネーピット』、『インナースペース』、『ニューヨーク東8番街の奇跡』、『世にも不思議なアメージング・ストーリー』『ロジャー・ラビット』、『リトルフットの大冒険/謎の恐竜大陸』、『晩秋』、『オールウェイズ』、『アラクノフォビア』、『ジョー、満月の島へ行く』・・・。これらに『インディ・ジョーンズ』シリーズそして『カラーパープル』、『太陽の帝国』、『フック』を加えた作品群・・・。これらがスピルバーグ印といわれた作品だと思います。おっと『トワイライト・ゾーン』が抜けてた。あと『ハリーとヘンダスン一家』もスピルバーグ印のような記憶が。(実際スピルバーグはタッチしていないようですが)
こう見るとスピルバーグ印としての全盛期は80年代であるといえるでしょう。代わって90年以降台頭してきたのがジェームズ・キャメロンを始めとする次世代のクリエーターとプロデューサーによる作品です。ポイントはデジタル技術の急速な進歩だと思います。今振り返るとこの変化にスピルバーグは少々対応が遅れたようです。その後1992年フランク・マーシャルはキャスリーン・ケネディと自分たちの製作会社を設立。独自の作品をプロデュースしていくことに。スピルバーグもキャメロン組のスタン・ウィンストンら新たな仲間を加え、ILMのCG技術を大胆に導入して『ジュラシックパーク』を作り上げます。そして、ここから第2の「スピルバーグ・ブランド」の構築が始まるのでした。
今回はここまで。次回はスピルバーグ印の申し子たちのその後などを書きたいと思います。
参考までに2000年9月時の世界歴代興行収入ベスト25を挙げておきます。
順位 | 米国内 | 海外 | 累計 | タイトル名(公開年) |
1 | 600.8$ | 1234.3$ | 1835.1$ | 『タイタニック』(1997) |
2 | 431.1$ | 491.5$ | 922.6$ | 『スター・ウォーズ/エピソード1』(1999) |
3 | 357.1$ | 563.0$ | 920.1$ | 『ジュラシックパーク』(1993) |
4 | 306.2$ | 505.0$ | 811.2$ | 『インデペンデンス・デイ』(1996) |
5 | 461.0$ | 337.0$ | 798.0$ | 『スター・ウォーズ』(1977) |
6 | 312.9$ | 459.0$ | 771.9$ | 『ライオン・キング』(1994) |
7 | 399.8$ | 305.0$ | 704.8$ | 『E.T.』(1982) |
8 | 329.7$ | 679.7$ | 350.0$ | 『フォレスト・ガンプ』(1994) |
9 | 293.5$ | 367.2$ | 660.7$ | 『シックス・センス』(1999) |
10 | 229.1$ | 385.3$ | 614.4$ | 『ロスト・ワールド』(1997) |
11 | 250.1$ | 337.1$ | 587.2$ | 『メン・イン・ブラック』(1997) |
12 | 309.1$ | 263.7$ | 572.9$ | 『スター・ウォーズ/ジェダイの帰還』(1983) |
13 | 201.6$ | 353.0$ | 554.6$ | 『アルマゲドン』(1998) |
14 | 285.8$ | 248.0$ | 533.8$ | 『ホーム・アローン』(1990) |
15 | 290.2$ | 239.1$ | 529.3$ | 『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』(1980) |
16 | 217.6$ | 300.0$ | 517.6$ | 『ゴースト』(1990) |
17 | 204.8$ | 312.0$ | 516.8$ | 『ターミネーター2』(1991) |
18 | 217.4$ | 285.0$ | 502.4$ | 『アラジン』(1992) |
19 | 213.0$ | 287.7$ | 500.7$ | 『ミッション:インポッシブル2』(2000) |
20 | 197.2$ | 297.6$ | 494.8$ | 『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(1989) |
21 | 241.7$ | 253.0$ | 494.7$ | 『ツイスター』(1996) |
22 | 245.8$ | 239.9$ | 485.7$ | 『トイ・ストーリー2』(1999) |
23 | 216.1$ | 263.2$ | 479.3$ | 『プライベート・ライアン』(1998) |
24 | 260.0$ | 210.6$ | 470.6$ | 『ジョーズ』(1975) |
25 | 181.0$ | 286.0$ | 467.0$ | 『ミッション:インポッシブル』(1996) |
世界歴代興行収入ベスト25の中にスピルバーグ関連の作品は8本! しかもスピルバーグ印の映画に関わった人のも含めると倍の数。もしかして世界でヒットした映画の半分くらいはスピルバーグと関係ある!?といえるのではないでしょうか。
TO BE CONTINUED・・・→
See You Next Summer!?
(2001.9.13)
極私的エーガ史。69-01 Copyright(C) 2001 カッツ伊知郎 デザイン: おぬま ゆういち 発行: O's Page編集部 |