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キシタケ音楽四方山噺

その55 - ジダンに男泣き -



『Mlah』
1989
Les Negresses Vertes
オリンピックにしろワールド・カップにしろ4年ごとというのはホント深いものがあ
るなぁとシミジミと感じ入る今日この頃なのは独ワールド・カップがあと準決勝と決
勝を残すのみとなっただけでなく日韓ワールド・カップからのこの4年間に僕自信か
なりの人生のアップ・ダウンを経験したからで4年後にまたワールド・カップを見ら
れる保証なんてどこにもないわけだから今のこの瞬間を楽しもうじゃないかと雑誌
『Number』のワールド・カップ特集号をめくりながら二本目のビールに口をつけた時
にそう思ったのだけど同時にブランク開けすぎの四方山噺の次の回は村上龍調のこう
いう出だしがいいかもとその時に僕は閃いたのだった。
まあそんなことはお構いなしに人生という名のゲームは続いていくのである、よく分
からないが。

ついでと言ってはなんだけど4年ごとに繰り返されるアホなことを書いておきたい。
ドイツ・チームを形容する時のあの『不屈のゲルマン魂!』とか
スペインの『無敵艦隊発進!』とか
イングランドの『サッカーの母国の威信にかけて!』とか
今回は出場してないけどロシアの『冬将軍到来!』とか
無意味過ぎて誰も何も言わないけど、こういうアホ常套句を見聞きするたび戦後焼け
野原の日本の貧困を思い出して寒くなる。
次回の南アフリカ大会ではきっぱりと止めていただきたいものである。

まあそんな瑣末なことはどうでもいい、なにしろジダンである。
準々決勝・フランス×ブラジル戦
もうキレてキレてキレまくるジダンって、いつ以来だ。
しかも今まで一度も上手くいかなかったというジダン・アンリのホット・ラインをこ
の大一番で成功させる。
くーっ泣かしてくれるよ、あのハゲ。

この大会で僕が何となく予想してたことは

× 日本は予選リーグは突破する
○ ブラジルは優勝しない
○ ジダンが有終の美を飾る(飾って欲しい)
おまけとして
○ ルーニーの一発退場あり

3番目は一番望み薄かなと思っていたのだけど。
勝利後のインタビューの晴れ晴れとした顔はどうよ、フランス人が狂喜乱舞するのも
よく分かる。
この先どうなるかは分からない。でも少なくともあと二試合、ジダンの輝きを僕等は
見ることができる。
まったくもって素晴らしい。

90年代初頭、フランスのポーグスなんて呼ばれ方もしてたゴッタ煮ロック・バンド
『レ・ネグレス・ヴェルテ』のアルバムは今聴いても相当によくて、僕にとってはフ
ランスの音楽というと真っ先にこのバンドを思い出す。
伝統的な(フランスの)大衆音楽をパンクなスタイルで演奏するというやり方は、確
かにポーグスと一脈通じてる。
特にアコーディオンが活躍してるのが最高で、激しい演奏なのに哀愁もあるという、
こういうのがフランスっぽいところなのだろうか。
ポーグスみたく今もしぶとく活動中と書きたいところなんだけど、2枚目を出したと
ころでヴォーカルの人が死んでしまって、
それ以後もアルバムを出してはいるんだけどファースト、セカンドの活きの良さは戻
らずというのがちょっと悲しい。

ジャケット写真はは89年の傑作ファーストから、ワルそうな面構えだけどファッショ
ンはビシっと決めてるところはやはりお国柄?
 

キシタケ(2006.7.10)

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発行: O's Page編集部 ご意見ご感想はこちらまで。