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vol.3

苦痛だらけのおじゅう

 多機能を目指したおかると違って、おじゅうははじめからデザインも機能もシンプルを目指す。なぜか。住所管理は面倒なだけで全く楽しいことがないからだ。電話番号や住所が羅列した画面を見てもまったくトキめかないのだ。しかしスケジュールは違う。スケジュールにはカレンダーという美しい額縁がある。きれいにデザインされたカレンダーにスケジュールをバランスよく配置すると、とても気持ちがよい。入力するスケジュールがあってよかったとさえ思う。ところが住所録は、たくさんの情報をむりやり狭いスペースに押し込まなければならない。しかも、すべての人物や会社を同じ枠組みに押し込んで画一化してしまう。醜いことこの上ない。だいたい、「11月6日サッカー五輪最終予選日本vsカザフスタン」というデータと、「取引先の電話番号は03-****-****」というデータでは前者のほうが圧倒的に楽しいに決まっている。だから、スケジュールを入力する作業はそれほど嫌ではないが、住所を入力する作業は苦痛以外の何者でもない。
 そんな苦痛だらけけの住所録ソフトを作る羽目になったら、これはもう絶対に「最小限の労力」がテーマにならざるをえない。だからデザインも機能もシンプルになる。昔、良いソフトはヘルプがなくても使える、とよく言われていたがまさにそれである(もちろんヘルプがなくても使えるから良いソフトとは限らないが…)。とにかく何も考えずに、起動、名前と電話番号と住所を入力、ハイ終了!とテンポよく作業を終えて住所入力の苦痛をなるべく和らげなければならない。起動!入力!終了!と5秒ぐらいで終われば理想的だ。(無理だが)
 そんなに苦痛なら住所録ソフトなんか作らなければいいのにと言われるかもしれない。ところが、これが摩訶不思議。年に五六回はかならずどうしても住所を調べなければならない事態に陥る。厄介なものである。もちろんこの五六回がなければ苦痛だらけの住所録なんて作りゃしない。

おぬま ゆういち (1999.11.3)

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アンダーグラウンド(地下工作) Copyright(C) 1999 おぬま ゆういち
デザイン: おぬま ゆういち
発行: O's Page編集部