第4回
「実写版 力石Vsジョー」のあとで
会社という所はストレスの元だ。
発言の一つ一つに注意し、足元をすくわれぬよう注意しなければならない。
敵はどこをついてくるかわからないし、何で機嫌を損ねるかわかったものではないからだ。
会社で、先日行われたボクシングの「畑山対坂本」についてどっちがタイプかときかれた。
本当は今回のテーマはこの世紀の一戦でいこうと思ったが、私は女がこの種のことについてかくのが嫌いだ。
それは誰が何といおうと男の世界のことだから。理屈ではない。男尊女卑とか男女平等とかそういうことじゃなく、ユーミンの「ノーサイド」のようなミョウな甘さに違和感を覚えるからだ。(土俵に上がっちゃいけないのも当然だと思う)
さて、私はこの問いにどう答えたか。
「出身地が同じ畑山です。」これ以上ない模範解答だ。
奴らは入ったばかりで、まだベールに包まれている私を探ろうとしている。
私は発言に本音風味を加えるのが大得意だ。ただしあくまでも風味原料なため、本音では毛頭ない。
すると、「会社の中では誰がタイプか」という質問もとびだす。
この場合、オトコ持ちか否かで答えは随分違ったものになる。
自分がフリーの場合はカンタンだ。好みのタイプがいたら、高らかに彼の名を逆指名する。後はむこうのドラフトにかかるかどうかだ。指名順位が2位以下なら……やめといた方がいいと思う。
問題は私がオトコ持ちの場合だ。私はその見た目に反して、オトコは一人でいい派なので、答えるのも面倒だ。
「会社には好みのタイプはいません」と答えようものなら「あいつ(またはあのブス)気取りやがって」といわれるだろう。スティンガーのような色男を指名したら、面食いでバカだと思われる。見た目「古田タイプ」のキレ者をいうとシャレにならなくなりそうだし、トロくてモテなさそうなのだと、ウケはいいが、そいつがストーカーになったら困る。
そこで閃いたのが「社長」だ。地位も金もある。
結果は、思わしくない。
あくまで奴らは新入りの私を探ろうとしていたのだから……。
私は金に目が眩む女のレッテルが貼られ、ますます男性社員との距離は開くばかり。
しかし、私は男好きでも会社のアイドルになりたいわけでもないので、このくらい距離があったほうが丁度いい。
実は「オトコって弱くて甘えんぼで亭主関白で、一人でも持て余すのに、変に親しくされても会社の男まで面倒みきれないから」が、本音だが。
(2000.10.19)
ロミオの心臓 Copyright(C) 2000 中央線のキャンディ デザイン: おぬま ゆういち 発行: O's Page編集部 |