その６

『Blue Light Till Dawn』 1993 Cassandra Wilson

ワールド・カップの日程が進んで、空き日がポツリポツリと挟まってくると、祭の終わりを感じずにはいられないですね。今年は梅雨寒で物悲しかったりもするし。この曇り空の中、負けた国の選手達はホテルの部屋で荷造りしてんのかなとか思ったり。それにしても、あっという間に6月も終わりに来ていたのでした。 毎年この時期、雨の夜に聴くのが カサンドラ・ウイルスン。一応、カテゴリー的にはジャズ・シンガーですか。唯のシンガーというだけでいい気がするけど、それだと分かりにくいかな。80年代後半、ドイツのマイナー・レーベルからレコードを出し始め、徐々に評判を上げていき、92年にアメリカの名門ジャズ・レーベル「ブルー・ノート」から出したアルバム『ブルー・ライト・ティル・ダーン』で商業的な成功と評価を獲得、今や看板アーティストですな。ロバート・デニーロ主演の映画『スコア』にバンドとの演奏シーンでチラっと出てきます、美しい女性です。とびきり歌が上手いという人じゃない、でも独特のムードがあって引き込まれる。ちょっと重苦しいと感じる時もあるけど、しめり気を帯びた、雨を連想させる声を聴きたくなって、夜中にCDの棚を探すのであります。 ファースト・アルバム『ポイント・オブ・ヴュー』は、アグレッシブなギターとの絡みがスゴい傑作。この一作だけでも、フツーのジャズ・シンガーとはハナっから目指してるモノが違うのが分かる。評価は低いけど『ジャンプ・ワールド』も好きだな。ブルー・ノートでのアルバムは、全てしっかりとしたコンセプトに貫かれててハズしなし。ジャズにブルーズにソウルやフォークを咀嚼し、飲み込んだ汎アメリカン・ミュージックとでも言うべき音楽が展開されてます。ミュージシャン・シップの高い人なんだろうな。ジャケットは『ブルー・ライト』。ソウルの名曲『アイ・キャント・スタンド・ザ・レイン』のカヴァーも入ってます。

キシタケ（2002.8.4）※執筆は7/1

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