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キシタケ音楽四方山噺
 その9

『Gil E Jorge』
『Gil E Jorge』
1975
Gilberto Gil/Jorge Ben
編集長宅に行く。『濱マイク』の撮影で忙しそうだ。コラムの内容とアップする日のタイム・ラグを気にする人っているんだろうか?まぁ、ワールド・カップのネタが終われば、あまり関係なくなるとは思うのだけど。それよりなにより、閲覧数を見てウッとビビった。ホーム・ページ・アドレスを教えた友人の数に、限りなく近いような・・・。「あくまでマニアックを基本としてるしな」と、編集長はクールな笑み。始めて一ヶ月だしね、ハハハ。というわけで、ポップ・ミュージックに関する疑問、質問等ありましたら(勿論感想でも)メールをお送り下さい。できうる限り回答いたします。

さて、ヨハン・クライフ氏がご立腹だ。ブラジル×イングランド戦の後の新聞のコラムでこう記している。いわく「ブラジルは内容の乏しいサッカーをしている」「今のブラジルを救っているのは質の高い個人技だけだ」「たとえ他の国がブラジルの真似をしたとしても、その個人技のレベルには致底及ばない」「そんなブラジルが勝ち進むことは、世界のサッカーを誤った方向に導くだろう」コキ下ろしてます、ブラジル。ただ4年前のフランス大会の時も、守備重視でカウンター攻撃主体のサッカーが支配的なのを、美しくないと嘆いておられたから、『空飛ぶフットボーラー』の氏の悩みは深いのでしょう。ただヨハン、心配しなくていい点もある。どの国も、ブラジルの真似をしようとは思ってないから。

知り合いのギタリストが、買って聴いたはいいけど気分が悪くなって直ぐ売っ払ったというアルバムがあって、『ブラジリアン・ホット・デュオ』(ベタな邦題)がそれなのだけど、ブラジルの個人技というとコレをいつも連想するんだな。ジルベルト・ジルとジョルジ・ベン(この人は紹介しました)二人のシンガー・ギタリストのデュオ・アルバム。ベースとパーカッションのみのバックに、二人はアクースティック・ギターとヴォーカルでそれぞれの持ち歌を演奏する。一人が曲のリフとメロディを奏でると、もう片方が、ある時はそれに沿うように、ある時はカウンター的に曲に加わっていく。サンバのリズムを(多分)基本にして丁々発止の技のやり取り。じわじわと盛り上がりつつ曲が続いていく(全9曲中4曲が10分台)1対1の格闘技というか、ボケとツっ込みの漫才というか。ほとんどスタジオ・ライヴのノリで仕上げたらしい。技術的に極めて高度というわけでもないだろうけど、二人の音楽力(チカラ)がフツフツと沸き上がっとるですよ。ブラジル音楽の巨人の二人だからこそ可能なスタイルなんだろうな。ロナウド&ロナウジーニョにリバウドとロベカルの4Rというカンジですか。友人のギタリストが嫌になったのも分からないではないけど、これぞ音楽を聴く悦楽ってモンでしょ。いいアルバムです。
 

キシタケ(2002.9.14)※執筆は7/14

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発行: O's Page編集部