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キシタケ音楽四方山噺
 その25

『Red Hot+Riot』
『Red Hot+Riot』
2002
Various Artist
さて、寒いっすねぇ。コタツの季節です、何はなくてもコタツ。"熊"と称されること昔からある男なので(生活パターン的に、体型的に、人は襲わない)この時期は仕事と余程の用事以外は出歩かず、暖かくなるまでこの中でゴロゴロ。聞くモノもそれに合わせて、いろりで暖をとるようなザ・バンドとか、焼イモのようにホカるソウル(オーティスとかボビー・ウォマックとかベティ・ライトとか)を定番としてオトナしくしているのだけど、昨年の初冬に困った新譜を聞いてしまった。

アメリカのR&Bやヒップ・ホップ系、ブラジルやアフリカのミュージシャンが大挙参加した「レッド・ホット・シリーズ」の14作目、フェラ・アニクラポ・クティのトリビュート・アルバム 『レッド・ホット+ライオット 〜ザ・ミュージック&スピリット・オブ・フェラ・クティ』。 これは困る、聞けば必ず脈拍5割アップ、気分が高揚して居てもたってもいられんだ。コタツの中でヌクヌクしてる場合じゃない! う゛ぉう゛ぉー(燃え上がる炎のイメージ)

では、どうすればいいのかはよく分からんので、とりあえずもう一回聞く。 CDのブックレットの冒頭にはこう書かれている「このアルバムを聞き終えるまでに、150人のアフリカ人がHIVに感染する」。「エイズに対する認識の向上」を目的とした「レッド・ホット・シリーズ」がスタートしたのは1990年のコール・ポーター・トリビュート盤『レッド・ホット+ブルー』からで、以後ジャズメンが 参加した『レッド・ホット+クール』、ブラジル新世代のミュージシャンを集めた『レッド・ホット+リオ』、デューク・エリントン・トリビュートの『レッド・ホット+インディゴ』等々、ナイスな企画と的確なミュージシャンの選択でおしなべてクオリティの高いシリーズなのですが、間違いなく今回のヤツが真打ちでしょう。

知られている通り、医療制度の不備や情報不足もあり今エイズ問題が最も深刻な地域といわれているのがアフリカの国々です。アフリカが産んだ最初の世界的ミュージシャン、ナイジェリアの故フェラ・クティについては四方山噺その77で紹介しましたが、重要な点が抜けていました。フェラはその歌詞で、アフリカ諸国から搾取を続けている西欧の大企業やその片棒を担ぐナイジェリアの軍事政権を、その社会的不正を、痛烈に批判していたのです。その為、官憲に何度も逮捕され(マリファナはいつも吸ってたみたいですが・・・)軍隊(軍隊っすよ)によって 屋敷は何度も襲撃され、母親は二階の窓から突き落とされて、それが元で死去。自身も何度も重傷を負わされたりしています。にもかかわらず、そのアジテーションは一向に衰えることなく、その姿勢も含めて民衆は彼をその音楽を熱狂的に支持したといいます。代表作の『ゾンビー』も、権力者の命令に盲従する者達を痛烈に皮肉った歌。25年も前の曲なのに、そのメッセージはいまだに有効なのですよ。 正に闘士。「RIOT」という言葉がこれほどハマるミュージシャンはいないでしょう。

残念ながら1997年、エイズによる合併症で死去。さすがのフェラもエイズには勝てなかったかと言われましたが、どっこい「リターン・マッチ」をカマしてきたワケです。フェラの曲自体、強烈な磁力を放っているということもあるし、彼の曲を演るにはそもそも強力な精神性というかミュージシャンシップを持ってないと無理ということもあると思う。参加している全員が、ただならぬ気合いと使命感で曲に臨んでいるのがガンガンに伝わってくる。フェラのスピリットを受け継ぐ者たち、その一人一人を取り上げて演奏を誉めたたえてもいいけど、ヤボは止めときましょう。『聞けば分かる』 ただラストを静かに締めくくる、コラ(アフリカの弦楽器)の旋律をバックにしたババ・マール(セネガル)とタージ・マハール(アメリカ)のデュエット曲を聞くと、フェラが蒔いた種子が世界中で芽ぶいているのが実感できる。 フェラ・ミュージックのとっかかり、入門アルバムとしても最適だと思う。文句なく昨年の個人的ベスト・アルバム、それがコレです。
 

キシタケ(2003.2.1)※執筆は1/30

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