その44 |
『Phoenix City』 2004 The Skatalites & Friends 『King Of Ska』 2000 Prince Buster |
キシタケ役者日記 六月某日 オファー ウチで昼寝をしていたら、編集長おぬまから電話がくる。 おぬまがプロデューサーで、今月の半ばにクランク・インする映画の出演依頼だった。 ま、またか・・・・。 マネージャーにスケジュールを聞いてみる、と言ったら少しウケた。 図書館で『フランク・ザッパ自伝』を借りる。 部屋の掃除をしなければ。 六月某日 衣装合わせ 〜らしい服装で、という注文だったので適当な服を製作会社に持っていく。 〜というのは役柄なのだけど、書いてしまうと面が割れるので書かない。 事務所にはチーフ助監督のハセとカッツもいた。 ハセは時々掲示板に書き込みするけど誰もレスしなくて放置状態の多いあのヒトである。 顔見知りのスタッフもいて少しホッとする。福谷監督にもお会いする。 台本を貰って読んでみる。ひそかに期待していた某有名俳優さんとは登場シーンが違い残念。 僕はモロにビートたけし世代なので、中坊の頃は『天才たけしの元気が出るテレビ』を毎週見ていたのだ。勿論『仁義なき戦い』は傑作だと思う。 しかし、出るシーンがやけに長いのでヒビる。しかもセリフまである。 この時点で緊張してくる。 僕はアガり症なのだ。 レコード屋でスカタライツ(その16で紹介)関連の音源を54曲も詰め込んだ、圧巻のコンピレーション盤『フェニックス・シティ』を買う。 暑くなってくるとカリブ・中南米路線まっしぐらというのが、ここ数年続いている。 六月某日 出番その一 六本木の撮影スタジオに行く、駐車場にデデ−ンとBMWが。 主演のKさんのだろうか。 さすが「スター」 撮影二日目の今日は、Kさん扮する「ゴッド・ハンド」の異名をとる天才整形外科医の自宅でのシーン。 地位も名誉も財産もあり(とーぜん)女にも不自由しない彼だが、実は裏の顔があって・・・というストーリー、ジャンルはホラー。 控え室で他の役者さんと結構長い時間待機する。この状況もあまり好きではない。 僕以外はプロの役者なワケだから(付き人のいる人もいる)、「ナニこの男。こいつも俳優?マジ?」 とか思われてるんじゃなかろうかと感ぐってしまう。 違うんだ、友人のスタッフに頼まれただけなんだ、本当は脚本家なんだよと看板でも掲げたくなる。 まぁいいんだけど。 以前の撮影で一緒になった、ダンサー兼俳優の中川さんと雑談できたので暇が潰せてよかった。 でリハーサル、カメラの位置から見てもだいぶ映ってそうだなぁ。 しかも一つだったセリフが、もう一つ増える。はや緊張はピーク。 気温も30度を超え(勿論クーラーは使えない)、汗がドーっと出てくる。 だから役者には向いてないんだって、と一人ごちる。 でも何とか乗り切る。NGを二回出した。 ガハハハ。 ドっと疲れて控え室に戻ったのだった。 六月某日 出番その二 日曜日、今日も朝から異常に暑い。 正午に、撮影現場になる鷺宮の某クリニックに行く。 弁当を食べながらスタッフの人達と雑談、さすがに皆さん疲労の色が濃い。 僕の出番はチョロっとなので気は楽。 「キシタケ相変わらず動きがカタいからなぁ(大笑)」 おぬまには毎回言われるんだが、それにしちゃあ毎回呼ばれる。 頼みやすいのは確かだが(ギャラは必要ないし)。 意外や役者として鍛え上げて、一流に仕立てようという魂胆あるのかもしれん(ないない)。 今回は台本に役名と名前までバッチリ載っている。 複雑な心境にはなる、世の中には喉から手が出るほどチャンスを渇望している役者志望の人間はゴマンといるだろうから。 まぁ、なかなかに難しい。 なんとか予定の二シーンをこなす。 終わった、なにもかも・・・・・ 矢吹丈を倒した力石徹の気分。 気がつくともう夕方、風も涼しくなっていた。 そしてまた僕は大勢の前で赤っ恥をかいたわけだ(公開されたら更にかくし)。 その為に引き受けてる気がしてきた。 恥の感覚のない輩は嫌悪するけど、赤っ恥ならいくらでもかいてやるぜ(笑) 今日の撮影も深夜まで続くみたいだが、僕はそそくさと帰り支度(役者の特権だ)。 撮影が終わったら飲もうぜと声をかけ、お疲れ様と現場を後にする。 ウチに帰り、シャワーを浴び、ビールを飲む。 うー、これだぜ、一仕事終えたあとのビールは最高だ。 夕暮れを眺めながら60年代のヴィンテージ・スカを聞く、いい感じだ。 |
キシタケ(2004.5.27)※執筆は4月
キシタケ音楽四方山噺 Copyright(C) 2004 キシタケ デザイン: おぬま ゆういち 発行: O's Page編集部 |