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キシタケ音楽四方山噺
 その47

『Stiff Upper Lip』
『Stiff Upper Lip』
2000
AC/DC



『Fun House』
『Fun House』
1970
Iggy Pop & Stooges



『Tattoo You』
『Tattoo You』
1981
Rolling Stones
待望のDVDが発売される『スクール・オブ・ロック』を熱く語ってみるかね、と手ぐすねひいていたのだけど、「テコ入れの為に宣伝よろしく」とタールマンから要請あったので、公開中のもう一つの馬鹿映画について書くことにします。
……いかほどの宣伝効果があるのやらですが、一館あたりの動員では『スパイダーマン2』や『華氏911』をしのいだとも噂される、タールマン脚本のアレです。
『MASK DE 41』『MASK DE 41』
ストーリーは……(以下ネタバレあり)
「田口トモロヲ扮する41才のサラリーマンが、リストラを期に人生を見つめ直しリングに上がる!」というもの。
見つめ直し方が違ってるんだよ、とツッコミを入れながら見るのが正しい映画といえましょう。
出来もいささか(相当?)アラっぽい。映ってるそばからアラがポロポロこぼれているような、出演者、制作者が一丸となってスクリーンに荒っぽさをぶちまけているような。
プロレス・マニアにしか解らないネタも散りばめられているようだからコチラとしては増々混沌としてくるのだけど、半ばまでくるとそのノリに感覚も慣れて(マヒして?)、このままいっちゃってくれやと気にならなくなってくるから不思議。
久々に体験したタールマンのノリ。
案外高度なワザかも知れない(絶対違う)

しかしプロレス・マニアってのは不可解な人種だ。
いい大人が家族の集まる居間にアントンのポスター貼ってたり、いんちきくさい(というか、いんちきそのものの)その男の言葉を後生大事に胸に刻んでいたりする。
実際にいるみたいだから、尚更ヤだ。
僕はヘタレ田口の犠牲になる家族の人達の方に余程同情していたのだが、勿論そんな例外的な観客などおかまいなしに強引に話はクライマックスの試合のシーンに進んでいく。
これが、なんと、圧巻だった。
監督は田口トモロヲに、試合ではスタントなし、相手の技に耐えられるように体を鍛えることを要求したらしい。
数ヶ月かけて13s近く体重を増やし、体をぶあつくした役者の根性はたいしたものだと思う。
しかし監督のこの要求(目論見)は、田口をいっぱしのプロレスラーに見せる為ではなかったことは、試合が始まると明らかに分かってくる。
これがとにかく徹底的にやられる。
当たり前だ。相手は現役のレスラーなんだから、骨格がそもそもまるで違う。並んで立つとアマチュアに毛が生えた程度でしかないのがありあり。
これは「ロッキー」のような話ではない。田口は何度も投げ飛ばされ、技をかけられ、いたぶられ、完ぷなきまでにやりこめられる。反撃すらもかなわない。
いけにえだ。完全に。
田口はいけにえとしてリングの上に差し出されたのだ。会社をリストラされ、退職金はヤマ師の松尾スズキにパーにされ、家族は離散寸前、それまでの90分近くをかけてへこまされ続けた男を、さらに観客の前で負け犬のさらし者にする。
この作り手の悪らつはどうよ。
そして僕は、アホみたくやられ続けるだけの田口トモロヲにグッときていた。いやそんなキレイな言葉じゃないな。ひたすらマゾとサディズムを喚起されていた。もっと気合いれろ田口というか、もっとやられろ田口というか、じれってぇ、オレをリングに上がらせろとすら思った。
リングに上がってレスラーと本気で勝負してぇ!
劇場の多数を占めてるだろう、あるプロレス・マニアどもと同じ目線同じメラメラドロドロした熱情で僕はこのファイトにのめり込んでいた。
格闘技の映画の、タネも仕掛けもないマジックを見せられた感じだ。
見事な手腕だと思う。
それから一直線にプロレス・マニアの道を邁進し始めたということは全くないけど、あの馬鹿っぷりはナカナカいいなと今は思う。

「馬鹿は死ななきゃ治らない」この映画に対抗できるロック馬鹿一代といえば、AC/DC!イギー・ポップ!ジャケット似てるからストーンズも載せとくかい。
ロックンロールでカッ飛ばせ!
前回と〆方が一緒だ。まぁいいか。
ロック馬鹿につける薬も、またない。


追記

原稿で最も肝心なことが抜けてました。
「まだ観てない奴は劇場にダッシュ!」

あと今しがた知ったのですが、15日にガンで亡くなったラモーンズのギターリスト、ジョニー・ラモーン氏(本名・ジョン・カミングス氏)にR..I..P.(Rest In Peace)
N.Y.・パンクの雄ラモーンズも、愚直にロック一筋の馬鹿、もといロック御馬鹿様なバンドでありました。
 

キシタケ(2004.9.16)

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デザイン: おぬま ゆういち
発行: O's Page編集部