その48 |
『Bayou Country』 1969 Creedence Clearwater Revival 『Green River』 1969 Creedence Clearwater Revival |
熊八「えぇ!?試合中止?」 弥一郎「スト決行かよ」 熊「あー、昨日はずっと酒盛りしてたからテレビ見なかったすよね」 弥一「どうりで、来る時に観客の波がないと思ったよ。泣くんじゃないよ雄壱郎、仕方ねぇじゃないか」 熊「ちきしょう古田!どうしてくれるんだ、チケット代返せ!」 弥一「お前招待券だろ。それに俺のだし」 熊「そうでした。しゃーない他の球場行きましょう。金かかるし高いけど。ドームだと夕方からのハズですよ」 弥一「それマジで言ってんの?」 熊「……。ドームの試合もやらないんすか?」 弥一「日本全国のプロ野球が中止だと思うがな」 熊「古田ぁ!どないなっとんねん!」 弥一「古田のせいじゃないよ。雄壱郎もグズるの止めてくれよ。ちょっと新聞買ってくらぁ」 熊「オイ坊主、こんな事で泣いてどうすんだよ。世の中ってのはな、坊主の存在なんて全くかまわずに動いてんだよ。世界は大いなるクソでできてるんだって肝に銘じときな。これからヨボヨボになって棺桶に入るまで、お前が望んだり必要とするものなんて何一つ手に入らないんだ。一日一日をしょうがないしょうがないって念仏のように唱えながら、自分を諦めていくのが生きていくってことなんだ。坊主なんてまだ恵まれてる方だぜ。親は二人ともちゃんと世話してくれてんだから。でもな、そういう幸運がいつまでも続くと思うなよ。この先は下り坂しか残ってないっていう人生だって世の中にはゴロゴロしてんだから。アタッなに殴るんすか壱さん。」 弥一「お前七才の子に何を吹き込んでんだよ。さっきよりビービーいってんじゃないか。おぅおぅ安心しろ、父ちゃんがついてっからな」 熊「世の中の現実を教えてやっただけですよ」 弥一「そういうのは世界の片隅で一人でやってろ。全く、コイツがお前みたいに陰気な人間に育っちまったらどうすんだよ。酒と音楽しか友達がいないような奴に」 熊「あと孤独と自己嫌悪もいますよ、それだけいりゃあ人気もんの部類っすよ」 弥一「なんだかな、まぁいいや。ほら新聞」 熊「『カルキン坊や、マリファナ所持で逮捕』」 弥一「どこ読んでんだよ、一面だよ一面。『選手会と球団側の交渉決裂』だってよ」 熊「全くねぇ、寄らば大樹の陰、長いものには巻かれろなんて言葉を知らねぇのかね選手会は。ガキだねぇ」 弥一「世の中の99.9パーセントの人間はお前と反対の意見だよ」 熊「マイノリティ意識が染み付いてんでね」 弥一「70年も続いてきたんだから淀みも相当あるだろうし、ちょっとやそっとじゃ方向転換できねぇよな」 熊「しなくていいじゃないすか」 弥一「親会社の企業論理としてはそうだわな。宣伝媒体として独占寡占状態を保てれば、これほどウマミのある話はない。でも、それではプロ・スポーツとは永遠に呼ばれないよな」 熊「難しいこと分かんねぇや。プリンス聞きながら弁当開けましょうか」 弥一「お前そればっかし」 熊「ラジカセも持ってきてるし。うー、キタキター、このキャッチーなギター・リフ、タフでラフなバンド・サウンド、ボーカルの激しいシャウトって、これジョン・フォガティじゃないすか。CCR?」 弥一「今回ボケ倒してないかお前。出かけにカセット取り換えたんだよ。そう毎度毎度プリンス聞かされてたまるか。野外で野球なんだからクリーデンスに決まってるだろ。クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル。3分間のグッド・ロックンロール・レコード。信念を持って清廉なる川の流れを蘇生させろか。60年代後半の激動のアメリカの気分をよく表してるバンド名だと思うね。」 熊「ウマイっすね、コレ」 弥一「壁を作って流れを遮断したら淀んでいくだけなんだよな。そんな事そもそも無理だしね。人の意識なんか特にそうだよ」 熊「ウムウム」 弥一「でもいい曲書くよなぁ、ジョン・フォガティ。リフ作りの才はチャック・ベリー直伝って感じ、しかもほんの2、3年の間の話なんだよな。彼自身バンド解散後もソロでポソポソとアルバム出してるけど、このバンドで燃え盛ったということなんだろうな。」 熊「あーもうお腹一杯、奥さんのサンドイッチ旨いすねー」 弥一「……ウチのヨメは美人なわりに料理は上手いんだ」 熊「ヘイヘイ」 弥一「オイ、機嫌直ったか雄壱郎、よしキャッチボールするか」 熊「おぉ、あったかい親子の交流だって子供相手になに本気で投げてんすか!しかもナックル。あぁ坊主、気ぃ失ってる」 弥一「獅子は子供を千尋の谷に落とすんだ。立て。這い上がって来い雄壱郎!父を越えてみせろ!」 熊「十分越えてると思うけど……(人間的に)」 |
キシタケ(2004.9.27)
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