その51 |
『Volenteered Slavery』 1969 Roland Kirk 『I, Eye, Aye』 1996 Rahsaan Roland Kirk |
ここの執筆陣にリッチなヤツはいないのか? いないよな。 さて、池袋にレコードを売りに行った。 僕は新譜も中古もブックオフの安レコも、とにかくドカドカとレコード(CDのことです)を買い込む方なのだけど、当然全て気に入るワケなく「売りモノ」がある程度貯まったら(あるいは金が必要になったら)リュックに詰め込んで中古レコード屋に持っていくわけです。 で、大抵の場合、それでまたレコードを買うと。 アホですかね。まあいいんですけど。 今回はニルヴァーナのBOXが出るってんで(こいつぁー大事)適当にみつくろったものの、何しろ3枚組のCDにDVDが付いて国内盤は税込み9450円ナリと結構値が張る、しかし「限定盤」買い逃すワケにはいかない。 ―――「限定盤・Limited Edition」この言葉にレコキチは弱い――― 売りモノは10枚くらいはあるけど明らかにそれじゃあ足りない。 こんな時に棚から抜くのは決まってジャズ。 ここ数年はずっとそうで、今ではジャズのCDのコレクションも3分の1くらいに激減してしまった。 売っ払ったのに後悔もしていない。 理由は2つあって、 典型的な4ビートのハード・バップ(日本のジャズ・ファンの9割方がこのスタイルの信者と思われる)というスタイルに結局のめり込むことがなかったのと、 ジャズはアナログで聴くのが一番ということに気付いたこと。 しっかりしたステレオ・システムでアナログ盤を聴けば、CDとの音圧の差は歴然で、ジャズの場合は特にそれが顕著。 ジャズ喫茶のでかいJBLのスピーカーから流れてきた芯の太いベースの音にオォっと感動して、家でそのCDをかけてみたらショボすぎて途中で止めたなんてことが何度もあって、僕がジャズに求めているのは腰を据えての鑑賞じゃなく楽器の「鳴り」を体感することなんだなと納得、さんざん買ってきたCDに全く愛着がなくなってしまったというワケです。 だから逆に、ジャズってイマイチピンとこないというムキは一度ジャズ喫茶でアナログ盤を聞いてみたら如何だろう。 CDの音からは分からなかったものが感じとれるんじゃないだろうか。 片っ端から消え去っていく名盤・定盤のたぐいの中でもしぶとく生き残っているのは、ブルースやソウルやレゲエと同じニオイ、黒い体臭を発散させているヤツで、サックスのローランド・カーク(1935〜1977)のものは、その中でも絶対外せない。 盲目であるという事も多分関係してると思う。正に我が道を行くというタイプで一度にテナーやクラリネットやフルートをくわえて同時に吹くという曲芸と言われかねない奏法をしている。(夢のお告げで吹くようになったらしい) でも勿論、彼は音として必要だからそれをやってるワケで、出てくる音には一点の曇りもない。 濃密でエモーショナル ジャズマンというより寧ろジョン・リー(フッカー)やライトニン(ホプキンス)といったブルーズ・シンガー、R&Bのレイ・チャールズといった人達と比べて語った方がいい気がする。 音楽のジャンルや型ではない、本物のソウル・ミュージック。いかに貧弱なステレオ・システムだろうと、耳ダンボで聴いてると胸が一杯になって感動がおしよせてくる。 取り上げたアルバムはどちらもエモーショナル度全快の傑作。下は1996年に発掘された72年奇蹟のライブ盤、これがジャズ・ファンだけにしか聴かれてないというのは本当に勿体ないことです。 曲もホップでいいしね。オススメです。 満足のいくステレオ・システムをいつの日か設置したあかつきには、これのアナログ盤(当然アメリカ・オリジナルの初回盤)をでかい音で心ゆくまで鳴らしてみたいんだけど、 いつになることやら……。 |
キシタケ(2004.11.30)
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