O's Pageバックナンバー月刊文文掲示板次作品

いそのカツオをブッ殺せ! Sumata
<10>

 「虹を見たな…」
再びバイクにまたがったボクはそうつぶやいてほくそ笑んだ。虹どころか大雨は一向に収まる気配がなく、遙か彼方には稲妻が走っていた。深山の女将さんの最後の言葉が心の片隅に引っかかっていた。まだ今のところは「若い」という一言で大方のことが許される段階にあるのだろうと渋々自認する一方で、行き当たりばったりの活動や飛躍した言動ではなく、今後はより理論的に体系的に自らの「やりたいこと」を実行し実現してこそボクの「若気の至り」も有益で有意義なものになるのではないかと自覚していた。とりあえず、少なくとも最低限、空虚で軽率な言葉だけは金輪際口にすまいと、ボクはしかと肝に銘じた。
突然後方から、大地を揺るがすような轟音がとどろいた。それは雷鳴ではなく、大井川鉄道のSL列車だった。甲高い汽笛を大井川の景勝に木霊させて進むSLに伴奏するように、ボクはアクセルをめいっぱい開けて国道473号線をひたすら南に下った。

(了)

(リアル)まっこい34
2004.11.30


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まっこい34駄作連載中 Copyright(C) 2004 (リアル)まっこい34
デザイン: おぬま ゆういち
発行: O's Page編集部