No.9 |
第5回
ゆめのあと
〜嗚呼・五輪終了或イハ始マリ〜
来てしまったのにも関わらず、20世紀中にあげなきゃならん原稿を今頃書いていたりする。嗚呼!!
というわけで、今更前世紀の話をするのをお許し下され。
今回は「五輪・最終回」と銘打ち、シドニーオリンピックなるものの総評なんて事を、偉そうに書き連ねて、「ロビタの五輪」を締めくくらせていただこうと思う次第であります。
とにかくめでたい。日本オリンピック委員会会長の八木氏が言った「金8個」の目標には届かなかったものの、金メダル5個とは立派なものである。(注:アトランタは3個)
そして中でもやはり、柔道以外では唯一の金メダリスト・高橋尚子の功績が讃えられてしかるべきであろう。
とはいえ、すでにお茶の間の皆様にとって「高橋尚子&小出監督」コンビは食傷気味だと思うが、やはりちょっと言いたかったりするので言わせてくれ。
コレに関して言えることは、「やはり高橋尚子はすごかった」この一言に尽きる。
ロビタはレース前から、高橋尚子が負けるところは想像がつかなかった。
こういうとオリンピック関連の仕事仲間からは「それは言い過ぎじゃないか?高橋だって人間なんだから、負けることもあるだろう」と必ずと言っていいほどいわれていた。それでも私は、高橋の勝利を半ば確信していた。
私とその仕事仲間との考え方の違いはなぜか?
それは一重に「高橋の番組を担当したことがない」という理由だ。(おそらく)
高橋という選手、知れば知るほどその「化け物度」に驚かされる。例えば彼女の記録。
現在の日本記録は高橋が出したバンコク・アジア大会の2時間20分台の記録である。この記録は世界歴代3位・・・つまり、高橋より速いタイムを持つ選手が上に2人もいる、ということである。
しかし、これはあくまでタイム上の話である。じつはこれらの上位選手達のレースは、全て低気温でおこなわれたレースなのである。そもそもマラソンとは冬に行うもので、真夏の炎天下でするものではない。しかし五輪を含め、幾つかの国際レースでは「開催月は毎回同じだが、開催国は随時変更する」ため、国によっては夏にぶちあたってしまうことも少なくないのだ。この様なレースでは普通良いタイムは出ない。
ところが、1998年12月のバンコク・アジア大会は違った。・・・というより、高橋尚子は、違った。
この時期のバンコクはまさに真夏。最高気温30度以上・湿度80%という、死人が出かねない高温多湿のバンコクを、高橋は日本新記録&大会新記録で走り抜けた。もうこれは化け物としかいいようがない。
実際に、高橋より速い記録を持つ海外の2選手だけでなく、「女子マラソン世界歴代10傑」全員のレース状況を見てみると、その全てが気温20度以下(10度前後)で行われたレースなのだ。この結果からも、高橋の「化け物度」がわかるというものだ。陸上連盟の医科学委員の方にも、高橋について質問をしたことがある。
Q:高橋選手の強さの秘密は何でしょうね?
A :さっぱりわかりません。こういったら悪いけど、人間離れしてるとしか言いようがないですね。
むむう。やはり化け物か。
そして身体能力以外にも欠かせないのは小出監督の存在。
これももう皆さん食傷気味だと思うので、インタビューで聞いた印象深いエピソードを一つ。
(知ってたらすんません)
高橋曰く「自分には、長距離の才能が無いと思っていた」そう。学生時代の陸上部監督達にも「お前は中距離向きだ」と言われていたとか。
それがなぜ、金メダルをとるほどのスーパーマラソン選手になったのか?
それは、小出が高橋のマラソン能力をいち早く見抜いたのからなのだ!!
・・・というと、「単に観察眼に秀でた監督なんじゃあ〜ん!」と思えてくる。
そこで小出監督に聞いた。
ロビタ :「なんで高橋がマラソンにむいていると思ったの?」
小出監督:「だって、いくら練習しても楽しそうで、ぜ〜んぜんイヤな顔しないんだもん」
なんだそりゃ。もっとさあ、なんつーか「走るときの姿勢が良くてピッチとリズムに光るものを感じた」とかさあ、「バランスが他の選手と格段に違いましたね」「そのタフな精神力とねばり強さかな」とかなんとかあるでしょう!もっともらしい発言がさあ!!
と、拍子抜けするロビタであったが・・・小出監督がすごいのはこの後なのであった。
「高橋にマラソンをやらせよう」と思い立った監督は、来る日も来る日も彼女に囁いた。
「お前は絶対マラソンに向いてる、お前は絶対マラソンに向いてる、お前は絶対・・・・・・」
もう、オウム顔負けの洗脳---マインドコントロールである。
これがなんと、効いてしまったのだ。
高橋曰く「自分で才能が無いと思っていても、365日の間に365回も言われ続けると、『あれ?もしかして、私マラソンの才能あるのかな?』と、思えて来るんですよね・・・」だとか。
ううむ。恐るべし、小出マジック。
そして、本当に金メダルを獲ってしまったこのコンビは本当にすごい。
バルセロナとアトランタで銀メダル・銅メダルを獲った有森裕子を育てたのも小出監督だが、有森の場合はなんだか悲壮感が漂うマラソンだった。有名なコメント「自分で自分をほめてあげたい」も感動的でイイが、高橋のコメントの前には霞むだろう。なんたって、「すごく楽しい42.195キロでした」だもん。器がちがうわな。・・・と、別に有森を否定するわけではないぞ、くれぐれも。2大会連続でメダルを獲った彼女はとても偉大だ。そうではなく私が言いたいのは、「やはり高橋は化け物だ」ということなんである。そんでもってすっごくカワイイという所がまた、化け物度を加速させてるよな。
とまあ、この2人に関して言えばキリがないので、結論は無いが(おい!)この辺でおしまい。
次は世界記録にチャレンジするそうなので、是非頑張って欲しい!絶対デキルと思うぞ!
そんでもって、シドニーで惜しくも入賞だった山口衛里選手も頑張れ!一行しか紹介できなかったけど、好きだから似顔絵描いちゃうぞ!!→
(2001.1.8)
ロビ太の脳味噌しぼりたて! Copyright(C) 2001 ロビ太 イラスト: ロビ太 デザイン: おぬま ゆういち 発行: O's Page編集部 |