No.10 |
第6回
ゆめのあと
〜嗚呼・五輪終了或イハ始マリ〜
最終回、のようなもの
外は雨が降っている。毎日毎日降っている。・・・あたりまえだ梅雨だから。
日本では「梅雨」と呼ぶが、英語で言うとRainy season・・・「雨季」となる。
どうだろう。まるでアマゾンだのジャングルだの、熱帯雨林な気分になるではないか。
そんなくだらないことを考えていた或る日、
もう夏がそこまで来ているということに今更ながら気が付いた。
そう、ボーっとしているうちに、あの
「シドニーオリンピック開始前の取材合戦」から1年が経とうとしているのだ。
私がそれこそ「ボーっと」しているうちに、
高橋尚子は世界記録更新のためにベルリンマラソン出場を決め、
トライアスロンの平尾明子は旦那の苗字に改名し関根明子として再スタートを切り、
競泳背泳ぎの中村真衣は世界記録更新を宣言してプロ化を熱望したりして、
トランポリンの中田大輔は映画「赤影」への出演が決まり、
シンクロのペアは新演技で「パントマイム」なんつー難しそうなものに取り組んでいたりする。
『彼ら』の時間は確実に流れているのだ。
私と同じ1日/24時間、
私と同じ1年/365日/8760時間。
しかしそれは私と同じではない8760時間なのだ。
私たちはオリンピックとかいう大げさな大会でだけ、『彼ら』を目にするかもしれない。
しかもそのオリンピックとかいう大げさな大会は、大げさなだけあって、4年に一度しか無い。
私たちは、しばし『彼ら』が4年に一度しか存在しないかのような錯覚におちいる。
しかし、『彼ら』の時間は私と比べようもないほど、密に存在している。
"この一年間でアナタは何をしましたか?"
そんな質問に澱みなく答えられる人の方が少ない。
しかし、「時間的には同じ」な一年間で
高橋尚子は世界記録更新のためにベルリンマラソン出場を決め、
トライアスロンの平尾明子は旦那の苗字に改名し関根明子として再スタートを切り、
競泳背泳ぎの中村真衣は世界記録更新を----------エトセトラエトセトラエトセトラ・・・
『彼ら』の時間は、私と比べようもないほど、密に存在している。
『彼ら』が少し羨ましく思える。
アスリートであり続けるということは、強い意志を持ち続けるということだ。
私たちの想像をはるかに越えた、強い意志を持ち続けるということだ。
それは生半可なことではないわけで、簡単に羨ましがってはいけない。
重々わかっている。わかっているのだ。
それでもやっぱり、『彼ら』が羨ましく思える。
アスリートじゃない私は、もてあました小さな嫉妬心をどうすることも出来ず、
"私だって密な時間の中で生きてるんだい"、と小声で言ってみる。
せめてもの反抗。(しかもかなりショボイ)
4年後―――いや、
すでに3年後となったアテネ・オリンピックで再び『彼ら』と出会うときには、
"負けないくらい密な時間を過ごしてきた"と言い切れる人間になりたいものだ。
ロビ太は切に、そう願うのでありました。
【ロビ太の脳味噌しぼりたて!/オリンピック編/了】
(2001.6.25)
ロビ太の脳味噌しぼりたて! Copyright(C) 2001 ロビ太 イラスト: ロビ太 デザイン: おぬま ゆういち 発行: O's Page編集部 |