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ロビ太の脳味噌しぼりたて!
No.11

第7回
お役所仕事という仕事
前編

■「お役所仕事」って本当にあるのね。

「お役所仕事」とは何か。
まず、土日祝は絶対に仕事をしない。それが当然の権利かのごとくしない。
仕事は常に9時から5時まで。たとえ窓口に、重そうな小包を抱えた老女が息せき切って駆けこもうとも、「5時までですから!」などとヨソミがちにいい、いそいそと帰りの準備を整える。
老女が抱えた小包は、実は一人暮ししている孫への差し入れで、中身はナマモノ。そして今日は金曜日。いまを逃せば発送は月曜になってしまうわけで、愛情たっぷりの差し入れは無残に腐り果てる。
そんな事情の老女が職員の目の前でいくら切なそうな顔をしたって、窓口は5時までだから仕方が無い。嫌ならあと一分早くくればいいじゃあないか。
そんな風に情のかけらも無く、規則という言葉ですべての融通の利かなさが正当化される。もちろん資本主義なんて関係ないわけで、競争の原理も知ったこっちゃない。仕事ができなかろうが遅かろうが、給料は確実にもらえるし首になんてならないから安心だ。
こんな仕事ぶりを、人々は皮肉をこめて「お役所仕事」と呼ぶ。

しかしこんな「お役所」への概念は偏見である。
「お役所仕事」というのは、単なるモノの例えで、実際に役所のすべてがこうというわけではない。
ところが先日、とある番組を担当した時に、私は自分の認識の甘さを痛感させられた。「お役所仕事」は確かにそこに堂々と、当たり前のように存在していたのだ。
ココで指す「お役所」とはどこか?隠し立てはしますまい。事実ですから。
「某環境省」それである。
隠さないといいつつ「某」をつけるあたり・・・それも無意味につけるあたり・・・ロビタは小物である。許せ。
冒頭で言ったような個人単位での「お役所仕事」は個人レベルの話だし、そうじゃない人もいるだろうし、たいした問題ではない。だが国家レベルの「お役所仕事」はどうか?これは大罪に値するんじゃなかろうか。
今回はこの「某環境省」の見事な「お役所仕事」ぶりに言及したい。

私は先日、海外に向けて日本の「今」を発信するという番組を担当した。毎回テーマは違うのだが、今回のテーマは「日本のごみ問題」。
うあー硬い。硬すぎる。脳みそトコロテンの私にそんな仕事をふるとは・・・知らないってって恐ろしい。
とはいえひきうけた以上はやらねばなるまい。
番組を作る上で必要なのはまず徹底したリサーチと情報収集。間違った情報を発信するなんて言語道断だし、それ以前にピントのはずれたコメントを書いたり、問題の根幹を見誤った構成をしないためにも不可欠な作業である。日本のごみ処理の歴史に始まり、その現状、問題点。地域ごとの分別の違い、ごみ処理場の余剰年数、各国比較・・・そんなもろもろを調べているうちにぶちあたったのが、ダイオキシン問題だ。

■ダイオキシンって、つまり何さ?

85g これだけで100万人死ぬ。スリムのスティックシュガーが79gだな。でもって100万人てのは仙台市の人口くらい。こええだよー!ダイオキシンという言葉は誰もが聞いたことくらいはあるだろう。
ダイオキシンは、もともと自然界には存在せず、人類が作り出した史上最悪の猛毒といわれている。発生源は殺虫剤や工業製品の製造過程、排ガスなど色々あるのだが、その9割が焼却炉。本来「燃えないごみ」に分類されるビニールやプラスチックなどの塩素系プラスチックが「燃えるごみ」に混入し、焼却されることによって発生しているという。その毒性は青酸カリの1000倍、サリンの10倍で、わずかスプーン1杯程度(85グラム)で100万人を殺傷することができるっつー、某毒カレーミセスも某グルもビックリ!のとんでもないシロモノだ。致死量に満たなくとも人体に蓄積されることで、発ガン性、催奇形性、生殖機能の低下、免疫力の低下、ホルモン代謝障害などの影響を及ぼす。
このダイオキシンの流出濃度が世界で一番高い国、それが我が国ニッポンなのだ。

今回私もはじめて知ったが、とにかく日本には焼却炉が多い。
国土が狭く、埋め立て量に限界がある日本では、ごみの約8割近くを焼却処分している。
この割合は、ごみの約1割〜3割程度しか焼却していない他国に比べると笑っちゃうほど高い。世界のほとんどの国は埋め立て処理が最も多く、焼却はほとんどしないため、焼却炉の数は段違い。地球上に存在する焼却炉の約7割が日本にあるって言うから驚きだ。
こりゃ日本が世界一のダイオキシン大国になってもおかしくない。
なるほどなるほど、と思いつつみていくと、日本もダイオキシン対策をいろいろ行っているではないか!
1997年に廃棄物処理法が改正され、焼却施設の構造、維持管理基準が見直され、ダイオキシン排出濃度基準が定められた。要するに、「たくさんダイオキシン出してる施設は、廃止するか改善しなさい!」つー命令だ。
よかったよかった。・・・と、思ってはいけない。
欧米諸国では、1976年に発生したイタリアの化学工場事故で周辺にダイオキシン被害が続出したのを契機に研究、対策を進め、ダイオキシン排出量削減に着手。1990年頃には、対策をほぼ終えているのだ。例えば1995年のデータをみると、各国の年間ダイオキシン排出量は、スウェーデン22g、デンマーク39g、ドイツ334gなどなど・・・だいたい数十から数百グラムの単位となっている。
引き換え日本の年間排出量はおよそ3000グラム。
諸外国がダイオキシンに厳しい監視の目をおいていたこの20年間、日本はただボーっと猛毒をたれ流しつづけていたのだ。世界一のごみ焼却国にもかかわらず。
しかしいまさら遅れてしまったものを嘆いても始まらない。
だったらこれから頑張ればいいではないか!改正された廃棄物処理法に期待しよう!
・・・と、思うと今度はどうだろう。その内容がまた、甘い。
廃棄物処理法のメインは、「焼却施設の基準値改正」である。つまり「この値以上ダイオキシンを排出させている焼却施設は、廃止もしくは改善しなければならない」という法律だ。
その基準値が、甘いのである。
たとえばドイツが定める焼却施設のダイオキシン排出値は1立方メートルあたり0.1ナノグラム。(1ナノグラムは1億分の1グラム)
改正された廃棄物処理法によると、暫定期間中のダイオキシン排出値を1立方メートルあたり80ナノグラムまで認めるという。つまりドイツに比べて800倍というとんでもない量のダイオキシンを排出をして良いとの見解。しかもその暫定期間が長い!
1997年に発令しているにも関わらず、正式施行は2002年12月だという。いくら猶予が必要とはいえ、5年間もの間、他国の800倍もの量の排出を認めるのは狂気の沙汰ではないだろうか。
でまあ今年の12月・・・要するに今月がその正式施行なのだが、その最終基準値もまたおかしい。日本が定めた基準は、既設焼却施設で10ナノグラム、新設でさえ5ナノグラムだという。結局ドイツの50倍〜100倍のダイオキシン排出が今後も公に認められることになる。この差はどういうことだ?
廃棄物処理法の改正内容を発表した当時、スイスのグリーンピースが速攻で確認の電話を入れてきたという。
「この資料の数字は桁が間違ってるのではないのか?80ナノグラムではなく、0.8ナノグラムでは?」
・・・いえいえ、間違いじゃありません。環境省は本気で言っているのです。かっこわらい。
いきなり「来月までに排出量を0.1グラムまで減らせ」なんて言ったら操業停止に追い込まれる焼却炉が続出するだろうし、処理できないごみもあふれるだろうし、そりゃあムチャな話だ。だがスタートが遅れに遅れた上に、5年も時間をかけてこれっぽっちの進展。本当にヤル気あるんですかね。

■汚染されてるらしいぞニッポンは

そんなこんなで、日本は未だ大量のダイオキシンを垂れ流しつづけている。諸外国には「日本は国民を使ってダイオキシンの壮大な人体実験をしている」とまで言われてるとかなんとか。
1997年に某環境団体がまとめたデータにによると、日本のダイオキシンの大気中濃度は欧米の10倍以上だという。また、大阪のある場所でダイオキシン濃度を検出したところ、5200万ピコという異常な数値が出、周辺の農地でも2700ピコという数値がでた(ピコは1兆分の1グラム)。数字でいわれてもわからんだろうが、この数値はオランダの安全基準の270倍もに及ぶ。牛乳や乳脂肪からは4.6ピコを検出。これはドイツなどでは販売禁止レベルだという。
奇形大国日本!……の絵を書こうとしたが、危ないので自主規制。日本はすでに大気も土地も水も汚染されまくってるということか!?
食べ物で言うと、魚なんて最もヤバイらしい。肉類より魚介類の方がダイオキシンを蓄積しやすいのだ。日本人は魚大好きだ。おいしいよな。刺身とか寿司とか煮魚も焼き魚も美味い!かくいう私も魚好きだ。しかし「♪さかな〜を食べると〜♪あたま〜がよくなる〜」なんて言いながら呑気に魚を食っていると、知らず知らずのうちにダイオキシンが体に蓄積されていくのだ。
さらに恐ろしい事を言えば、乳房にもダイオキシンは溜まるらしい・・・日本人女性の母乳に含まれるダイオキシンは他国に比べ高く、その数値は日本の安全基準でさえ26倍もオーバーしている(※最大)。アメリカの安全基準値と比べるとなんと400倍もオーバー!怖い。怖すぎる。
ダイオキシンってさあ、ぶっちゃけ、アレなんだよ。昔の話だがみなさんも決して忘れてないだろう、アレ・・・ベトちゃんドクちゃん・・・つまり、恐怖の枯葉剤。アレに大量に含まれていたのがこのダイオキシンなんだよね。大げさにいえば、赤ちゃんに毎日微量ずつ、枯葉剤を飲ませてるようなもんだ(これは極論か?)
この状況に対して厚生省(当時)は、「一生飲み続けるわけではない」と母乳育児を奨励したそうな。母乳に含まれる各種栄養を考えるとミルクあげるよりいいのかもしれないけどさ、本当にこのままでいいのか?呑気なこった・・・。あ、でも別に母乳を飲ませなければいいって問題でもないらしい。すでに胎児の時点でダイオキシン汚染の深刻な影響を受ける場合もあるという。国内では過去約15年間で先天性甲状せん機能低下症のクレチン症(知能障害)の新生児が約3倍に増えており(1999年調査)、ダイオキシンとの関連が指摘されている。
未来の子供たちはどうなるか?数十年後に日本は、奇形&知能障害大国になってるかもしれませんね。あはは。って笑えねえよ!!!

でだ。
ここまではまあ、各資料やネットの情報で得られることなんですよ。つまり長かったけどこれが前段。実際わたしが「こんなことでいいのかよ!?」と思った「お役所仕事」は別の話なんです。ダイオキシンの話はその背景なんですね。長いって?まあまあ。ここをわかってくれないと話がわかんないんだよ。聞いて損な話でも無かったでしょ?聞かないほうが良かったって話かもしれないが・・・(笑)
てなことで、話は次回に続く・・・気長に待て。

ロビ太(2002.12.16)

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イラスト: ロビ太
デザイン: おぬま ゆういち
発行: O's Page編集部